11月29日現地時間午後5時過ぎ、本年3回目のキガリ到着です。日本からは、大きなトランクにミキサー、ハンマー、ハサミ等の道具類、それにバナナ繊維を灰汁で煮るための、レストランなどで使われるステンレスの大きな寸胴鍋を、今回もしっかり持参しました。キガリから更に車で東南に2時間、キブンゴで車を降りると、懐かしいスタッフ達が通りで待っていてくれました。
【工房が完成、備品が搬入され、バナナペーパー作りの環境が整いました。】
今回の訪問目的は、バナナペーパーのカードなど、クラフト製品の生産システムを作ることです。パートナーであるキブンゴ手工芸品販売協同組合(COVEPAKI・コベパキ)そして組合担当として配属されているJICA青年協力隊の長原さんと、今後の体制について、製品の品質やデザイン等について話し合い、生産開始を始めるためです。
前回(9月)は、工房の建設許可を取得し、施工者との契約、整地、土台作りまで見届けましたが、完成した工房の中に入るのは初めてです。工房内はクリーム色のペンキが塗られ、明るい感じです。電気が引かれ、繊維を煮るためのガスボンベとガス台も揃っています。ただし燃料代を抑えるために、炭(火鉢)も併用していました。それでも、この辺りでは超近代的な工房なのです。早速持参した諸々の道具を開きましたが、机などの家具が何もないので、すべて床の上に雑然と置かざるをえません。「机は?」と尋ねると、「本当は2週間前に出来ているはずが、今朝も確認したけど未だ!」と。う〜ん、やはりアフリカン・タイムなのですね!
【コバペキ・スタッフの率直な気持ちが聞きたくて、ミーティングを持ちました。】
キブンゴに着いた日と翌日は、バナナ繊維からパルプ作りを、その次の日に、コベパキ・メンバー全員との話し合いの時間を取ってもらいました。皆がどの様に感じているのか?率直な意見を聞きたかったからです。私の質問と、それに対する彼らの意見は以下の通りです。
【私の質問】
- バナナ紙作りをどう思うか?
- グリーティング・カードのサンプルを見せて、一人ずつ感想を?
- もし大量注文を受けたら、どのように生産するのか?
【コベパキ・スタッフの意見】
- 大変感謝している。とても興味深い。
- 是非作りたい。各工程をきちっと教えてほしい。デザインは色々考えられる(と、店内に飾ってあった自身でカットした布の切り絵を持参するスタッフも)
- 夜遅くまででも働く。技術を習得し、生活が苦しい未亡人達に教えて、彼等が収入を得られるようにしたい。
等々、大変意欲的な感想や意見が返ってきました。
一人のスタッフから「なぜ機械を使って、もっと大量に生産しないのか?」との興味深い質問がでました。恐らく他のメンバーも同じような思いを抱いているように感じられ、「大規模な設備を要する、高熱・高圧処理が必要となる」と答え、さらに、洋紙と和紙の違い、そして手漉き和紙の紙質などについて説明しました。また日本の伝統技術であるとの点に、一同納得したようでした。
最後に、販売価格と原価(材料費・諸経費)について、手取り分(利益)を増やすには、原価コストを如何に下げるかを考える必要があると、具体的にノートに数字を書いて説明すると、皆身を乗り出して口々に何かを話しながら、ノートの数字に見入っていました。
彼らは、ミーティングの後は、意欲的にまた主体的な姿勢へと変わり、工房での作業も積極的です。私はコベパキのプレジデントに、「バナナ・ペーパーの担当者を決めて欲しい。」とお願いすると、「話し合ってから」とのこと。翌日、担当者(リーダーと呼ばれていますが)としてチャールズが決まったとの返事がきました。今後の運営は、長原さんとチャールズが相談しながら進める体制ができました。私は早速チャールズに、作ったバナナペーパーの品質確認、また備品の管理など、作業メンバーをまとめていくリーダーの責任について説明すると、その日の作業終了後には、ハンマーやハサミなど備品の数を確認していました。
【コベパキ・スタッフと一緒に、連日、試作品作りに全力を挙げました。12/8工房開所式に市長などの来賓が出席。バナナ・ペーパー作りに大きな期待が寄せられました。】
そんな中、工房開所式が12月8日と決まりました。工房内にバナナ・ペーパーのカードを展示してゲストをお迎えしたいと、全員総出で紙作りに、カードのデコレーションに、取りかかりました。
毎日朝8時から夕方5時過ぎまで、コベパキ・スタッフと一緒に、バナナ繊維の抽出、煮熟、揉み洗い、叩解、紙漉き、乾燥プレス、そして、カード製品作りの作業が続きました。
迎えた開所式には、キブンゴ市長、町長、村長など、また放送局3社も参加して、テープカットでスタートしました。工房内には出来立てのカードが並べられています。コベパキのスタッフは皆正装して晴れがましい面持ちです。市長に製品や作り方について、自ら“My Paper”と説明する姿に、自分たちのバナナ・ペーパーであるという意識が、既に彼らの中に定着している、そんな感じを受けました。
私からは「世界初となる手漉きによる“バナナ・エコ・ペーパー”が、このキブンゴの里からルワンダ中に、世界へと広がり、雇用機会の拡大に繋がることを祈っています。」とお話しし、そして市長は「HATの取り組みを大歓迎します。」とのご挨拶で終わりました。その模様は同日の19:00と19;30、翌日には全国版のラジオ放送で紹介されました。
【生産体制の第一歩がスタート。今後、日本の皆様の応援を宜しくお願いいたします。】
会場を飾ったサンプルを見て、現地を訪問していた、また住んでいる日本人からもご注文をいただきました。生産体制、またコベパキ・スタッフの意識もしっかり定まったように感じられ、実質的な生産システムを、一歩進めることができました。今後は、多くの日本の皆様にご購入いただけるよう、紙質の更なる向上と、またデザインについてもアドバイスを頂きながら取り組んでまいります。