「寺子屋稲生塾」講演のきっかけ
この度の稲生塾での、エチオピアについての講演は、新渡戸記念館第8代館長の新渡戸常憲氏夫人、新渡戸富恵さんからの紹介によるものでした。富恵さんとは、彼女が未だ独身だった頃にお会いし、それ以降時々交わすメールで、ご活躍の様子を認識しておりました。富恵さんに久しぶりにお会いできる、また私事ですが、両親の故郷に近い十和田へ、そんな気持ちで準備に取り掛かりました。
新渡戸富恵さんと(中央)
十和田湖
三本木原台地(現十和田市)を開拓した新渡戸傅(つとう)の偉業
さて「新渡戸記念館」というと、まず思い起こすのは新渡戸稲造のことですが、その他は詳しく知らなかったため少し調べてみました。
まず新渡戸家の出身は花巻ですが、なぜ十和田なのか? それは稲造の祖父 “新渡戸傳(つとう)” の偉業に深く関わっています。傳は62歳で不毛の原野と呼ばれた三本木原台地(現十和田市)の開拓に着手しました。奥入瀬川の水を引くため、綿密な測量により山々に穴堰(トンネル)を掘り、4年後に人工河川「稲生川」の建設に成功しました。現在の十和田市はじめ近隣の市や町に、命の水を運ぶ総延長70kmの稲生川により、流域には実り豊かな田園風景が広がっています。
また稲造の父、十次郎は、傳の後を継いで開拓を指揮、また碁盤の目状の近代的都市計画に基づく街を築いています。傳の意思で、花巻ではなく、現在の「十和田市新渡戸記念館」の後方敷地に、傳の墓(太素塚)、十次郎、そして稲造の墓が建てられています。
新渡戸記念館
新渡戸傅翁の墓碑
「太平洋の橋(かけはし)に」−身をもって示された新渡戸稲造
稲造は、旧5000円札の肖像に採用されています。札幌農学校で近代的西洋農学を学ぶ中で、東西文化の理解と融和こそ当時の日本、そして世界の課題であると考え「太平洋の橋(かけはし)」となることを目指しました。米独留学後に京都・東京帝大教授、国際連盟事務次長などを歴任し、命の尽きるまで平和を訴え、昭和8年カナダ・ビクトリアで亡くなっています。
新渡戸記念館は稲造博士からの蔵書8000冊や愛用・記念品、また開拓資料そして新渡戸家伝来の甲冑など多数が展示されています。
存続の危機にある「新渡戸記念館」
実は、新渡戸記念館は、現在休館中です。この経緯や現状については、新聞やTVなどで報道されており、ご存じの方も多いと思います。
新渡戸記念館は、新渡戸家の敷地に、1965年、市によって建設され、三本木原開拓の偉業の記録や稲造の遺品など貴重な文化財(殆どは新渡戸家所有)を保管・展示してきました。ところが、市はこの建物の耐震性に問題があるという理由で、急遽4月1日からの休館、そして記念館の取り壊しを決め、6月末で新渡戸館長および学芸員を解雇したのです。
※今回の講演について、最初に連絡をいただいたのは5月下旬でしたが、その後記念館を取り巻く事態が急変し、大変厳しい状況になったにも関わらず、「稲生塾」は、予定通り盛大に開催され、主催者の教育委の方々とともに、新渡戸富恵さん、学芸員の角田さん、スタッフの皆さんは、準備・運営に尽力されていました。
新渡戸記念館ボランティア「Kyosokyodo(共創郷土)」が、博物館活動を開始
現在、市側と新渡戸家双方の協議が整うまで、新渡戸記念館の建物の保護・保全、および所蔵資料の保存と活用とを維持しようと、「Kyosokyodo(共創郷土)
http://www.kyosokyodo.jp」が、新たに活動を開始しました。
文化財レスキュー活動
稲造の揮毫や開拓時の鶴嘴
ここに、共創郷土の下記アピール「7月1日以降の新渡戸記念館活動について」を紹介し、皆様の応援を呼びかけたいと思います。どうぞ温かいご支援を、何卒よろしくお願いいたします。 津田 久美子
〜十和田市民の手で大切な文化財を守り、未来へ伝えよう!〜
7月1日以降の新渡戸記念館の博物館活動を
新渡戸記念館ボランティア
Kyosokyodo(共創郷土)が担います
平成27年6月30日
新渡戸記念館ボランティアKyosokyodo(共創郷土)は、文化財保護協会有志や文化財の保全と活用を考える市民有志とともに「新渡戸記念館廃館・取り壊しの撤回」「資料の継続的な保存活用」を求め、10日間で 2799名(十和田市内 1625名、十和田市外1174名)の署名を提出しました。市内外の多数の声を届けたにも関わらず6月26日十和田市議会は十和田市立新渡戸記念館条例の廃止と取り壊しを可決しました。しかし、所蔵資料の保存活用については、新渡戸家と市の協議が進んでおらず、新渡戸記念館の博物館活動が空白状態となってしまう現状があります。
皆様の意を受けてKyosokyodo(共創郷土)ならびに市民有志は廃館取り壊しの撤回と建物の保存活用を求め全国に呼び掛けて活動を更に展開する考えです。また、7月1日以降、市と新渡戸家が建物の診断や取り壊しの是非をめぐる裁判の結果が出て、双方の協議が整うまで、所蔵資料の保存と活用が途切れることの無いように新渡戸記念館ボランティアKyosokyodo(共創郷土)が以下の博物館活動を継続致します。
<活動内容>
1 新渡戸稲造博士の武士道精神、十和田市のルーツである開拓の歴史を伝える新渡戸記念館の廃館の撤回を求めて全国に呼び掛けます。
2 新渡戸記念館の建物の保護・保全の活動を、専門家とともに、十和田市民、全国の有志に呼び掛けて取り組みます。
3 専門家の指導のもと「新渡戸記念館の所蔵資料」をこれまで通り保存し、郷土学習に役立て、地域固有の歴史と稲造の精神を他地域に発信することを求めます
連絡先:新渡戸記念館ボランティアKyosokyodo(共創郷土) 事務局 角田美恵子
〒034-0031十和田市東三番町24-1 TEL/Fax 0176-23-4430 Email :
info@kyosokyodo.jp
平成27年7月以降の新渡戸記念館の収蔵資料保存・活用の活動に対する募金活動をはじめました。
みなさまのご協力をお願い致します。
[新渡戸記念館資料保存募金先] 銀行名:ゆうちょ銀行 店名:八四八(ハチヨンハチ)種目:普通預金
口座番号:18126561 口座名義:キョウソウキョウド
※上記はゆうちょ銀行からのお振込み先です。他行からの振り込みは、口座番号が 1812656 となります。