ルワンダ有数の観光地・ムサンゼで、バナナペーパー作りが始動!

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※当レポートは、拙著「ルワンダに灯った希望の光 - 久美子のバナナ和紙」(2017年3月出版)http://hat.site-omakase.com/html/book.html の続きとなります。

〈2019/12/8 ムサンゼを訪問〉

12月8日 キガリから車で北に2時間半ほどの「ムサンゼ」を訪問しました。
ムサンゼはゴリラ・ツアーで有名ですが、ゴリラ観光のお陰でしょうか?ホテルや大型スーパーマーケット、銀行などが立ち並び、洗練された感じの大きな町です。また町を囲む様に聳え立つ3,000~4,000m級の岩山は、コンゴとウガンダとの国境に接しています。
今回の訪問は、ムサンゼの町から少し離れた地で Red Rocks Community Arts Center を運営し、その収益を地域に還元している代表のGreg Bakunzi (グレッグ)氏から、数カ月前、「バナナペーパーを地域の女性達(Women's Association)に教えて欲しい」との依頼があり、何度かメールのやり取りの後、実施の運びとなったものです。
氏の活動の詳細は、https://www.redrocksinitiative.org/

〈12/6キガリで実習の準備、グレッグ氏との打ち合わせ〉

キガリに到着した翌日(6日)、日本から持参した道具類の他に、キガリでブレンダー、また事前に発注しておいた特製の大型ステンレス鍋を購入しました。その後宿泊先のボンセジュールホテルでグレッグ氏と面会。こちらより、実習に必要な道具・部品のリストを渡し、9日からの1週間にわたるBPおよびBPクラフト作りの実習について打ち合わせました。

〈8日、Red Rocks Community Art Centerに到着、翌日からの実習会場を確認〉

Red Rocks Community Art Centerに到着した後、グレッグ氏が周辺の様子を案内してくれました。山からの豊かな水が小川や川になって地域を潤し、バナナの木々も太く見事に生育しています。そのバナナから作るバナナワイン!ご存知ですか?アルコール度が高めの甘い飲み物で、地域の人達が愛飲する特産品です。グレッグ氏の案内で、バナナワインを自宅で製造する家に立ち寄りました。日曜日だったこともあり、近隣の人達が集まって出来たてのバナナワインを楽しんでいました。庭にも数家族が集まり、皆なホロ酔い機嫌で楽しそうです。バナナビールが近隣の人たちを繋いでいる、そんな光景でした。
また、毎週2回開催される市場にも足を延ばしましたが、その規模の大きさに圧倒されました。人参、キャベツ、豆類などの野菜、サトウキビ、ツリートマト、バナナ、スイカ、パイナップルなどのフルーツ、肉類、揚げパンetc. 家族皆なで作物を頭に載せて運んできて、市場はごった返しています。よそ見していると、弾き飛ばされそうです。
Red Rocks Community Art Centerには宿泊施設の他、庭にテントやバンガローが点在し、またボタニカル・ガーデン(植物園)も魅力です。そんな緑に囲まれた「カルチャー・センター」が今回の作業場です。小鳥達がさえずり、オゾン一杯の大変気持ちの良い会場です。

〈12/9初日より、トラブル発生。頼みのブレンダーが稼働せず

初日は8名の婦人達が、バナナの茎と草木灰を各自持参してきました。 加えて男子大学生4人、アーティスト3人を含む男性、計15名と共にバナナペーパー作りを開始しました。婦人達は繊維取り出し、男性達は簡単なクラフト作りから始めました。
取り出した繊維を草木灰と共に煮熟して、良く洗ったのち、本来は叩解作業なのですが、今まで、訪ねた土地には、「硬い石」が見当たらず、これまで本格的な叩解作業を行うことはできませんでした。
また婦人達には鉄製の重いハンマーでの叩解作業は負担ではと思い、持参したブレンダーの使用時間を長くしようと考えました。しかし肝心の電力パワーがすぐに止まり、また、ブレンダーは、不良品なのか?スイッチオンして1分も経たないうちに、ヒートアップして煙が出てきます。参加した学生たちが付ききりでトライしましたが、思うようにブレンダーを使えず、結果的に最初に漉いたBPはうまくいきませんでした。

〈何とか現状打開をせねば! これまでの経験を思い起こす〉

「さあ!どうしよう?何とか改善しなければ」。夜も良く眠れず、今まで何ヵ所かで試みた光景を思い浮かべ、現状で可能な方法は?と考えました。
1) まずステンレスの大型鍋で、草木灰を入れて通常より長時間煮込む。
2) 例えハンマーが鉄製で重くても、ハンマーを使って叩解するしかない。そうだここはRed Rocks硬い石があるのでは?と考え、スタッフに尋ねると、ありましたぁ~「この石とあの石で……」と指定され、早速叩解作業を開始。
3) 加えてネリとして当初「小麦粉かコーンスターチ」を使うつもりでしたが、以前現地で「キャッサバから取るウブガリ」を、糊として使っていたことを思い出して確認すると、安価ですぐに入手できることが分かり、ネリは「ウブガリ」を使うことにしました。 

これらの工夫を取り入れた結果、繊維は叩解後細くしなやかになり、開始から4日目、2度目の紙漉きでやっと品質の高いBPを漉き上げることが出来ました。漉き上げた直後、一人の婦人が「バンザ~イさすが日本の技術」と両手を挙げて喜びを表現していました。

〈BP作りと同時並行で、クラフト作りを教える。「あっ」という間に時間が過ぎていく〉

その間、手の空いている人たちがいないように、カードやペンダント、袋などクラフト作りを教えたり、また、準備作業を割り当てたりと、慌ただしく時間が過ぎました。
それでも参加者達は真剣に作業をマスターし、特に大学生やアーティスト達は、私の言葉(英語)を婦人達に通訳(キニヤルワンダ語へ)したり、道具の後片付けなど、まるで助手のように手伝ってくれて大助かりでした。良い品質のBP生産へと、最初の失敗から、2度目の再試行を通して、大所帯でしたが、皆で力を合わせて多くを学べたように思います。

〈皆なでワイワイ、ランチタイム。最終日には「感謝のイベント」〉

ランチは、毎日Red Rocks Art Centerのスタッフが、参加者全員に提供してくださり、皆で楽しいランチタイム。また最終日には表彰状の授与、そして「感謝のイベント」も開いてくださり、普段より少しリッチな “肉入りランチと地元の飲み物”が用意され、皆で太鼓に合わせて歌ったり、伝統ダンスを踊ったり慌ただしく過ぎた一週間でした。そして忘れえぬ時間ともなりました。感謝です。

〈BP実習のまとめと今後の展望。キガリではJICAルワンダ事務所とWaterAid Rwandaからクリスマスカードのご注文〉

ルワンダの地でバナナの木々が林立するのを見て、これで雇用の創出を!と思い立って9年、今回のBP実習は、これまでの自身の試行錯誤を生かせたと同時に、紙づくりに必須の水が豊富に使え、また技術を求め意欲溢れる人達が集まってきた、など好条件が重なり、本当に手ごたえ、充実感のある訪問となりました。
グレッグ氏は、「観光旅行者達が立ち寄る休憩所を開設し、そこでバナナペーパー・クラフトを販売したい」と話していましたが、彼女達や現地のアーティスト達が作るBP製品が、今後旅行者はじめ多くの人達の手に届くよう、微力ながら協力していきたいと思います。

 なお、キガリに戻ってすぐ、今年もJICAルワンダ事務所、またWater Aid Rwanda から、バナナペーパーのクリスマスカードのご注文をいただいたと、アーティストから嬉しい報告がありました。
※感謝状を付記します。(和訳:筆者)
㉙Letter of Appreciatio
津田久美子 様       2019年12月17日
 感謝状

ルワンダ北部県、ムサンゼ、ニャキナマ のRed Rocks Initiatives for Sustainable Developmentのセンターにおいて、捨てられるバナナの茎からパルプを採取し、何種類かのエコ・バナナ紙の作り方を女性達に教える、ワークショップを開催して下さった津田久美子さんに対し、ここに感謝の思いを記します。
学んだ事をさらに発展、また生活向上に役立てていきます。Red Rocks Initiativesを代表し、貴女の貴重な時間と努力に感謝すると共に、今後も更なる協力をいただけたら幸いです。

Greg Bakunzi
Founder of Red Rocks Initiatives for sustainable development.