15回目のルワンダ訪問(2017/4/12~21)
新デザイン(BPランプシェード)を手掛かりに、販路と雇用の拡大へ

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※当レポートは、拙著「ルワンダに灯った希望の光 - 久美子のバナナ和紙」(2017年3月出版)http://hat.site-omakase.com/html/book.html の続きとなります。

新デザインのBPランプシェード - BPとルワンダ布とのコラボ

香港・アジスアベバ経由でキガリに着いた13日、ホテルでアーティスト達(セルセとムギシャ)から、BPビジネスの状況を聞きました。バナナ・エコカード(和紙カード)の注文が増えてきており、またランプシェードも認知が広がってきている、とのうれしい報告でした。
翌日から、セルセが講師をしている学校(春休みのため校長の好意で借用)で、BPランプシェード新デザインの作業を始めました。これは、BPの風合いを活かしつつ、かつ保護するために、ルワンダ人が愛して止まないルワンダ生地を使うデザインです。

まず円錐台を描いて計算方法(円周率・比例計算)を説明し、ランプシェードの展開図(扇形)の求め方を教えました。それを基に型紙を作り、次に、型紙に布を当てて裁断し、その1枚の布(扇形)を、バナナペーパーを貼ったランプシェードに重ねます。このとき、予め布を、模様を考えながら、数か所くり抜いておくと、ランプは、バナナペーパーを通した光、布を通した光と、2つの光となり、とても豪華に感じられるのです。
これをセルセとムギシャに3日間かけて伝えました。ムギシャは、時間が足りず完成まで至らなかったので、その後、自宅で製作したランプシェードをホテルに持参しました。そして、そこで初めてスイッチを入れたのです。多彩な灯りの魅力に、彼自身とても満足し、嬉しそうでした。

BP生産拠点・キブンゴから、2人(ロバートとガサナ)が参加

今回の新デザイン製作作業に、“バナナの里”キブンゴから、ロバートとガサナにも来てもらいました。2人は1年前、キブンゴの職業訓練学校BPコースを卒業しており、以来、キガリでのBP製品の素材であるバナナペーパーを生産・供給しています。現在の滑らかな薄い風合いのBPは、彼らの精進の賜物です。
良質のBPを生産するポイント、また問題点などを尋ねましたが、2人ともしっかり把握しており、地域の青年達を巻き込んでBPを作っていると、そしてロバートはキガリにも家があるので、そこでもBPビジネスを展開したい、と意欲的に語っていました。

彼らに参加してもらった目的は、セルセ、ムギシャとの連携を更に深め、必要とするBPの品質および枚数を、2人に届けて欲しいためです。実はムギシャが、彼らが作ったBPの値段が高いと文句を言ったことから、ロバートとガサナは「ムギシャには売らない」と言っていたのです。私は敢えて4人の前で双方の話を聞き、納得させる機会を作りました。最後は相互に握手し合い、今後のチームとしての取組みを約束し、肩を組んで写真に納まりました。

BPにロゴ・マークをプリントし、ラッピング用に!

また品質の高いBPにロゴ・マークをプリントし、製品のラッピングに使うことで、他製品との差別化、そしてMade in Rwanda 製品であるとアピールする案も出ていて、すでに印刷の試みが行われていました。セルセから渡されたプリントしたBPは、薄くしなやかで和紙と比べても遜色のない出来具合です。BPがルワンダを、アフリカを想起させ得るラッピング素材として、今後の需要が、新たなマーケットが拡大することを願っています。

更なるマーケットの拡大を目指して

日頃BPプロジェクトを応援してくれている、音楽・芸能の配信会社
Touch Entertainment (タッチエンターテインメント)社長のMutesa Theodomir (ムテサ セオドミール)氏に面会。氏はピュアBPに関心が高く、今までイベントなどへの参加費を負担、またホテルなどを紹介してくれていますが、セルセとムギシャに、良い製品を作り続けること、多くの注文を受けた時の体制を考えておくこと等と話し、私が常に訴えている点を、ダメ押しされた、そんな機会となりました。

また、キガリの大学で栄養学を教えている、ケニア人のLorna Ongesa(ローナ オンゲサ)女史にも面会。彼女は、いつもセルセにアドバイスをしてくれています。夕食を共にしながら、彼女から、私の活動の動機、なぜBPプロジェクトを?等、次々に質問されましたが、時差か疲れか、または食後の故か?思うように英語が浮かばず、歯がゆい思いでしたが、彼女の柔軟な理解力のお蔭で、何とか乗り切ることが出来ました。

JICAキガリ事務所で所長に面会

さらに19日は、JICAキガリ事務所の高田浩幸所長を訪問。氏は既にキガリの主要英字紙(The New imes
)のBPについての掲載記事を読まれていて、「あなたが紹介されていた日本人女性だったのですね!」と言われながら迎えてくれました。私から、ここまで来れたのは、多くのJICA青年海外協力隊員の応援のお蔭です、と御礼を申し上げました。
持参したランプシェードとBP和紙カードは、所長室に展示されることになりました。

見えてきたキガリ事情

今回の訪問で、セルセそしてムギシャと行動を共にするなかで、彼らの生活環境、キガリのより詳しい事情も見えてきました。
キガリの表通りを移動中に良く見かけるのが、クリーン・レディ(お掃除おばさん)です。メイン通りには街路樹が並び、サイドやセンターには草花が綺麗に配置され、しかも枯れ木や落ち葉、雑草などほとんど目にすることはありません。キガリが緑溢れるゴミの無い清潔な街として人気があるのは、このクリーン・レディーの働きによるものです。一緒に歩いていたセルセに尋ねると、彼女達は公務員待遇で、給料は公立学校の教師の月給(50,000フラン~)より若干少な目の40,000フランとか。

※1,000フラン(ルワンダフラン)≒ 130円
なお海外での美味しい料理については興味が尽きませんが、キガリのレストラン事情は、まず、かなり限られたチョイスしかありません。メニュー価格は、ルワンダ人が入るレストランは一人2,000フランほどから、外国人相手の店またはホテルでは、少なくとも1人8,000~15,000フランほどで、観光客やリッチなワンダ人しか出入りできません。
またムギシャが語っていた面白いエピソードを紹介します。
政府は樹木の伐採を防ぐため、煮炊き用に薪を禁止し、ガスの使用を決めたそうです。ガスボンベ(5,000フラン)の取り扱い業者の連絡先を配布し、交換時に電話するようにとのお達しだったので、ムギシャが連絡すると、スタッフが空のボンベを取りに来たそうです。ところがいつまで経っても新しいボンベを持ってきません。電話すると「ずいぶん時間が経ったのでもう分からない」と言われたと憤っていました。そのため自炊できず友人宅で食べさせてもらったと話すと、それを聞いていたセルセは「僕は絶対に頼まない。自分で持っていって交換しなけりゃ駄目だよ」と言うのです。2人のやり取りに何とも呆れましたが、油断もスキもありませんね!


またいつも泊まるホテルのフロント係は男性スタッフのみ、それも皆さん優秀で、恐らく大卒だと思われます。一方ホテルのレストランでサービスをするスタッフ達も、フレンドリーでしっかりした対応です。ケニア人のローナ女史と話をしていた時、一人のスタッフが、彼女に挨拶に来ました。聞くと、大学で女史の教え子だったとのこと。翌朝会った彼に「資格を生かせる職場は無いのですか?」と尋ねると、教師ぐらいかな?と。そして「地方では自分たちで栽培した作物だけを食べている。食材が限られているので、栄養が偏っている人達が大半。その点を教えたいが、給料が安いので……。」と話していました。
観光以外に産業がほとんど無いルワンダで、しかも物価の高いキガリでの生活は、なかなか厳しいようです。そんな中でBPクラフト、特にランプシェードの技術を身につけたセルセやムギシャが、今後さらに仲間を増やし生産を続けていけるかどうか?決して容易な道のりではないと思われますが、めげずに頑張って欲しい、新たな産業として広がるよう願っています。