4/1〜 酷暑のシェムリアップを訪問
5ヶ月ぶりにカンボジア・シェムリアップを訪問。昨年11月は雨季明けのベストシーズン。その時はかなり暑いとの印象でしたが、今思えば、それほどでもなかったように感じられます。
というのは、乾季の今は、日中の温度が40度近くにもなり、熱波の中に居るようで、赤土が舞い、街や通りはオレンジ色のフィルターがかかっている様です。
シェムリアップの中心地からトゥクトゥクで30分余、今回は、
山勢さん(NGOクマエ代表)が体調を崩し同行できず、代わりに副代表の折目さん(愛称くるみさん)と一緒に、バナナペーパー作業所のあるアンルンピー村へ。
砂塵が舞い上がる中を
市場の前のラッシュ
ガソリンを屋台で販売
アンルンピー村へ
ゴミ山に接している村に入ると、風向きにより腐ったゴミの悪臭が漂い、住民はさぞやシンドイことと! 気の毒に……。
トゥクトゥクを降りて、前回は赤トンボが飛び交う水田の細い畦道を通り作業所へ辿り着きましたが、その水田も今はすっかり干上がり、食む草もないためでしょう!牛も骨ばってガリガリ!
乾いた田を横切って作業所へ
牛にも過酷な季節
紙漉きの工程を見直して、更なる向上を・・・!
作業所では5人のスタッフが、基本的に 9:00〜11:00、14:00〜18:00頃まで働くリズムが出来ています。いままで手がけているカードは、デザインを工夫し、紙質もほぼなめらかに仕上がっていますが、今回お願いしておいた「うちわ」用に漉きあげた紙をみて、少なからずビックリ!泥色なのです。水の所為?それとも…? 叩解後に細かく切られた繊維が入っているタライの中もゴマ塩のよう! 理由を尋ねると、(サンプルとして持参した、ルワンダのバナナ紙を見て)、「バナナの種類が違うから。」との返事。
薄い紙づくりの準備
ルワンダで漉いた紙を見て
日本から持参のうちわ骨
バナナ紙製作工程を説明
う〜む!… 今まで見た、ルワンダ、フィリピン、タイ、ザンビア、沖縄・石垣島のバナナ茎から作られた各バナナ紙は、いずれも「淡い黄土色」や「クリーム色」だったので、バナナの種類の違いが原因ではない筈! 言葉の壁はかなり高いものの、色の点を指摘しても気にする様子もなく作り続ける彼らに、大きな不安を感じました。これでは「うちわ」作りの前に、パルプ作りの工程から見直す必要がありそうです。
余り気にしていない風に?
洗う工程が不十分?
和紙の風合いを認識させる事が大切
あらためて考えさせられたのは、“スタッフはバナナ紙についての知識、つまり良質と思われる紙の基準や風合いについて、どこまで分かっているだろうか?”という点です。
私達日本人は、少なくとも手漉き和紙の風合いや感触、イメージ等、専門的でなくても、ほとんどの人は知っています。でも彼らは見たことがないのです。しかもバナナ紙です。手漉き紙のイメージの共有を期待するのは、つまり「分かるだろう。」という思い込みは通用しないという事です。
ここシェムリアップでは、昨年11月にバナナ紙の作り方を山勢さんに伝え、彼はそのノウハウを村のスタッフに教え、すぐにカードの生産・販売を開始しました。そして生産開始から5ヶ月経った現在、バナナ・カードの生産の殆どは、村人に任せているようで、ともするとイージーな方へ方へと流れてしまう?…とも考えられます。品質の高い製品を作り続けるためには、基準をしっかり認識させる、そして定期的に確認する仕組み作りが大切だと、考えさせられました。
山勢さんに紙漉きのノウハウを
3種類の紙を漉きました
基本工程をしっかり踏襲して良質のバナナ紙とクラフトの生産を!
新たな商品、例えば「うちわ」また「カレンダーや名刺」等の生産に、挑戦しようとしているNGO kumae(クマエ)の彼らにとって、バナナ紙の色や風合いなどの、基本的な品質の維持は必須です。カンボジアの人達は、元来とても器用のようで、基本となる工程を踏襲できれば、さらに良質のバナナ紙、素敵なクラフトが生まれることは間違いありません。
今回の訪問が、彼らにとって本格的な、そして再びのスタートとなれば、HATにとっても大きな収穫です。今後もNGOクマエの山勢さんやくるみさんと、そして村のスタッフ達と共に、との思いで応援し見守り続けたいと思っています。
ティ君、ソムナン君のお出迎え
アンルンピーがバナナ紙の里となる様に
「うちわ作り」のポイントを伝えて。
本格的な生産は、より白いバナナ紙が漉き上がってからですが、いつでも生産を開始できるよう、「うちわ作り」のポイントを伝えてきました。汗が吹き出る作業所で、皆の真剣な眼差しが手元に集中し、冷や汗も混ざってグシャグシャでしたが −ホント!うちわが欲しい〜 − 皆んなは、しっかりマスターしたようです。 どんな作品が出来上がるのか?楽しみです。
型紙に沿って
どんな模様に?
カットしたバナナ紙を骨に貼ります
作業を終えて帰路
HATコーヒーを味わいながら、今後の課題を話し合いました
栄養士の資格を持つ澤村さんがシェムリアップにオープンしたお店で、山勢さん、くるみさん、カンニャーさんたちと、今後の課題について膝を交えて話し合いました。また持参したHATコーヒーを飲みながら、カンボジア・コーヒーとの違いについて,etc..歓談し、楽しい一時を持ちました。
帰国の日には、山勢さんが、3日前に作業所で皆んなで作った「うちわ」を持って、ホテルに見送りに来てくれました。紙の色に課題はありますが、丁寧な仕上がりです。今後に大いに期待したいです。
豆をミルで挽いて
ブラックでも甘いですね!
山勢・くるみ・カンニャーさんと
元気になった山勢さん
最後に、シェムリアップのミニ紹介。
合間をぬって、シェムリアップ市内、近郊に行きました。
炎天下、時間の都合もあり、アンコールワットやバイヨンなど、野外には行かず、国立アンコール博物館、バイヨン・インフォメーションセンター、オールドマーケット、パブストリートそしてトンレサップ湖(ボートクルーズ)など。
☆国立アンコール博物館(再訪問)
アンコールワットに行く前に、見学をしておくのが、お勧めです。
☆バイヨン・インフォメーションセンター
バイヨンの修復にあたったJASAの遺跡修復・保存活動を紹介するセンター。
カンボジアの歴史、宗教、文化、遺跡を分かりやすく学ぶことが出来ます。
寺院建築の変遷
砂岩に浮き彫り
☆オールドマーケット、パブストリート
パブストリート1
パブストリート2
☆トンレサップ湖(ボートクルーズ)
湖へのコースの途中、「アンコール芸術センター」に立ち寄り、歴史的な工芸品や技法を見学。
目的地であるトレンサップ湖は、乾季で水位がかなり下がっていて、ボートが進む両脇には、雨季には水没する家々の土台部分が露呈しています。クルーズの最後は水上レストランでの休憩です。とても幻想的な夕日が印象的でした。
アンコール芸術センター
ボートクルーズ
高床式の家々
水上レストランからの夕日